登山中に遭遇した新燃岳噴火の話。命を守ることを伝えたい。

by - 3月 19, 2021


 2018年5月14日、霧島の高千穂峰登山中に新燃岳の噴火に遭遇しました。
地元のテレビやインターネットなどご覧になった方もいると思います。当時、あちこちのハイカーから噴火の体験談を聞かせてほしいと言われましたが、それも面倒になっていたのでブログに記しておくことにしました。

新燃岳噴火のツイート拡散から学んだこと。


当時、私のツイッターをご覧いただいていた方は御存知かと思いますが、高千穂峰の登山中に新燃岳の爆発的な噴火に遭遇しました。噴煙や噴石から逃げる際中のツイートが拡散され、たくさんの人から心配の声をいただきました。
 

噴火から逃れた登山者ということで、当時は取材依頼が多くあってとても疲れました。
最後のほうでNHKさんの取材を受けましたが、霧島登山において噴火による災害の危険認識を重く受け止めているらしく、火山の活動次第で今後に特集を組むとのことでした。

私は独りで山に登ることが多いです。喋る相手がいないその山行は、嫌でも自分と向き合う貴重な時間となります。
自分は何を考え、誰を想って山に登っているのか?今回の経験によって学んだことがあります。
それは、人を悲しませないこと、そして霧島山に登るビジターの方へ活火山の危険を伝えることです。

ツイートが拡散されたことにより批判が多少ありましたが、そこで危険認識を感じてもらえれば、と思ってそうしました。




まさかの噴火から逃げるまでの経過。


高千穂峰は霧島連山の中で最も人気のある山です。
自分は人混みを避けたい人間なので、いつも遅い時間から登山スタートとなります。


この日は高千穂峰の東側のミヤマキリシマの花を楽しもうと、皇子原(天孫降臨コース)から登りました。
雲ひとつ無いとても良い天気で青空と花を楽しみながら山頂を目指しました。

山頂に着いたのは午後2時過ぎくらい。登山される人の多くは昼過ぎには下山しているんです。
誰もいない山頂は居心地が良く、玄米おにぎり&おはぎを美味しく頬張っていました。

快晴ということもあり、緑が美しい新燃岳をずっと眺めてボーっとしていたんです。
だんだんと眠くなってきたのでもう帰ろう、そう思ったとき、目先の新燃岳が「ゴォーーーン」と地響きのような轟音で噴火しました。


真上に噴き上がるブルカノ式噴火です。
まさかの瞬間を目前にして、その噴煙の美しさに見とれてしまい立ちすくんでしまいました。


きのこ雲のように真上に吹き上がる噴煙。
初めて間近で見たこの光景を収めようと、震える指でスマホのシャッターを切ります。


当初、噴煙は南の方に向いていたため、落ち着いていれば大丈夫だと思っていました。
しかし、徐々にこちらの東側に向かってきます。

これは本当に危険だと感じて逃げる準備をしました。
これまでの青空が一気に暗くなり、不気味な黒い影に覆われます。


その数秒後、細かい噴石がカツンカツンと音を立ててザック(リュック)に当たります。
激しい雨のようにバーッと落ちてくる噴石。
急ぐあまり帽子をどこかに忘れた私の髪の中は、細かい噴石でいっぱいになっていました。


その後はとにかく無我夢中で高原町側へ逃げました。
火山礫の登山道を走って何回コケたかは覚えていません。
だんだんと火山ガスが臭ってくるなかで「まだ死ねない」と無理に足を動していたように思えます。


ミヤマキリシマが美しい稜線から鞍部まで降りてきて、何とか助かったと安心できました。
ここでツイッターを立ち上げて、安全確保のツイートをしています。


そのリツイートの数が3000RTとか凄いことになっており、案の定、小林市警察からの電話やMRT宮崎放送からメッセージなど、それに対応しながら無事に下山しました。


実は高千穂峰の山頂には、このような山小屋があります。しかし、山小屋に避難しても助かる保証はありません。

それは噴石や火山ガスなど、御嶽山噴火の山小屋の事例でみても安全とは思えないからです。
私が下山を選んだのは正解だったと今は思っています。




守るべきものがあるからまだ死ねない。


以前に草津白根山(群馬県)の噴火の事例もありました。
近くにあるスキー場のゴンドラが宙吊りになり、中にいた男性が死を覚悟したのか「パパ、愛してるよ」とお父さんに告げていました。


その発言がSNSなどで話題になってましたが、これは死に直面した時に出る本心なのではないでしょうか。
私自身、逃げてるとき「まだ死ねない」と思ったのも、同じように守るべきものがあってこそでした。




命を守るために伝えたいこと。


私は霧島連山において、噴火の警戒範囲など熟知しているつもりです。
なので、飛来する噴石を遮ってくれる高原町側へ逃げました。

でも慣れていない登山者だったらどうだったのでしょうか?
自分と同じように判断できるとは限りません。
焦って登山道を間違い、火山礫の急斜面から滑落することも充分に考えられます。


霧島連山の下には幅が約15km、厚さが約5kmのマグマ溜りがあると解明されました。
はっきり言って、いつ噴火してもおかしくありません。

今回は水蒸気噴火でしたか、もし2011年のようなマグマ噴火だったら、自分は死んでいたと思います。

私のような事例は今後も有ると思います。
その緊急時、登山者自身が命を守るためにどう行動すればよいのか?
経験した自分がお伝えできることは色々あると思っています。

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